山の寺寺院群と瞑想の道
山の寺寺院群
山の寺寺院群が誕生したのは約400年前といわれ、前田利家が能登の領主として小丸山に「小丸山城」を築城した際に、能登方面からの侵攻に備えるため、防御陣地に転用する目的で29ヶ寺を配置したのが始まりです。
現在残るのは16ヶ寺。なかには無住となってしまった寺もありますが、今も拝観可能な寺もあります。いずれの寺院にもその歴史とともに語り伝えられた逸話、前田家とのつながりを感じさせる文化財などが残っています。
寺院群をつなぐ「瞑想の道」
山の寺の寺々を繋ぐように整備された「瞑想の道」。
寺院群の16のお寺をつなぐこの道を散策しながら心穏やかにめぐるルートとして人気となっています。
16ヶ寺の紹介
西念寺
境内には閻魔堂があり、以前は子どもの勧善懲悪教育に利用されていました。
国指定重要文化財の刺繍阿弥陀三尊像や県指定文化財の絹本着色三尊来迎図、市指定文化財の釈迦涅槃図が保管されています。
宝幢寺
上杉謙信の七尾城攻めのとき、兵火を受けなかったために七尾方に降伏した上杉方の武将を収容し、後日この寺で処刑されました。
境内には歯治し地蔵があり、箸と煎った大豆を三粒供えると効があるそうです。
龍門寺
七尾の盛大なお祭り「青柏祭」では長ましという和菓子が有名ですが、龍門寺の本堂を大ケヤキ一本を使って建立したことから、屋根と同じ形をした「長まし」が作られたそうです。
七尾出身の安土桃山時代を代表する絵師、長谷川等伯の「紙本墨画達磨図」を所蔵しています。
また、裏庭には推定樹齢700年のラカンマキの大木があり、七尾市天然記念物となっています。
徳翁寺
前田利家の寺領寄進の黒印状を所有しています。参道入り口にある地蔵尊は眼病に霊験があるそうです。通称、牡丹寺としても知られており、5月には赤白黄色の美しい花で楽しませてくれます。前庭に約60株の牡丹が見事です。
長齢寺
寺院群の中でも特に前田家とのつながりが深く、利家が能登で建立した唯一の寺院です。前田家初期の人物の墳墓、供養塔、肖像画などが多く残っています。貴重な寺宝も多く、宝物殿では若き日の利家の画や利春などの複製を展示。戦国武将の面影を感じることができます。境内裏にある大きなタラヨウは、手紙の発祥ともいわれる木。葉の裏に棒などで文字を書くと茶色く浮き上がってきます。
成蓮寺
日像上人が七尾を訪れた際に、宿泊した番匠家が日像上人に帰依したことから、番匠家の真言宗の菩提寺を日蓮宗に改宗しました。
紙本白猫淡彩涅槃図は市指定文化財となっています。
本延寺
日親上人の弟子、日賢上人が開いた寺で長谷川等伯の生家の菩提寺です。
市指定文化財の日蓮聖人座像や絹本著色釈迦涅槃図を所蔵しています。
實相寺
日蓮宗の寺院。門前の迫力ある仁王様が出迎えてくれます。鬼子母尊神と清正公を祀っています。本堂の裏手には、樹齢700年の椎の神木があり、圧倒されます。
市指定文化財の長谷川等伯絹本著色日蓮画像があります。
印勝寺
別名「桜寺」とも呼ばれており、境内には多くの桜が植えられています。また、秋には紅葉が美しいお寺です。本堂は建て替えられていますが、山門等は時の流れを感じます。
本行寺
高山右近が禁止されていたキリスト教の宣教をこのお寺で続けていたことから「キリシタン寺」とも呼ばれています。十字架が隠された「隠れキリシタン秘仏」もあります。
また、モミジが多く植えられており「紅葉寺(もみじでら)」の愛称もあるそうです。
長壽寺
長谷川等伯の養家である長谷川家の菩提寺で、元々は真言宗でしたが、日蓮宗に改宗しました。県指定文化財の絹本著色涅槃図を所蔵していますが、七尾美術館に保管されています。梵鐘も市指定文化財です。
恵眼寺
通称じぞうさんの寺とも呼ばれており、門では合計12体のお地蔵様が迎えてくださいます。
上杉謙信の来攻により一度消失しましたが、前田利常の母、寿福院の帰依により、再建されました。その為、寿福院の直筆の手紙等が現存しています。
妙圀寺
春と秋に開運様(開運の日蓮大菩薩様)の大祭があり、多くの参拝者が訪れます。
平成14年に立教開宗750年の慶讃諸事業の一環として、住職のお母様が描かれた天井画があります。本堂の天井には草花の、開運様お堂には帆掛け船が描かれており、一見の価値があります。
しだれ桜や、紫陽花、イチョウ、能登キリシマツツジ、紅葉、柚子の木など、四季折々の植物と共に楽しんでください。
長興寺
まず山門に辿り着くと、総ケヤキの山門に納められた立派な龍の彫刻欄干が目を引きます。末法惣鎮守七面大明神、鬼子母神十羅刹女が祭祀されています。底のない柄杓が多く残されているのは、明治時代に遊郭の芸妓が身心の安寧を祈り、子預けを祈願した名残です。
妙観院
寺院群唯一の真言宗の寺で、龍宮城の入口のような唐門づくりの山門が目印です。
境内には七不思議の伝説があります。その一つが釣鐘の釣り手が、一般的な龍ではなく、虎なのです。これは、願いが叶わず入水して命を絶った女性が龍に化けて寺の釣鐘を何度も海に引きずり込むので、「龍虎相打つ」の故事にならって鐘の釣り手を竹と虎のモチーフにしたところ事態がおさまったというもの。七つすべて探してみるのも面白いです。
また、弘法大師が霊木に彫ったとされる聖観音菩薩の他、絹本著色十三仏画像、木造二天立像、木造地蔵菩薩立像があり、七尾市指定文化財となっています。